目次
1 相手方に弁護士がついたとき
夫婦間で離婚の話し合いをしている途中で、相手方が弁護士を立てることがあります。本記事では、相手方に弁護士がついたときの対処法について、ご説明します。
2 文書が送られてくる
相手方に弁護士がついた場合には、多くの場合「受任通知」「受任のお知らせ」などといった文書が送られ、次のようなことが書かれています。
① 代理人として、弁護士がついたこと
② 相手方(妻または夫)が離婚を求めていること
③ 離婚の条件(慰謝料、親権、養育費、財産分与など)
④ 今後は、弁護士を通じて連絡をすること
3 相手方と直接連絡をとることができなくなる
相手方弁護士から文書が届いたあとであっても、弁護士を通じずに相手方と直接話をしたいと思われるのも、無理からぬことと思います。
ただ、相手方は離婚について弁護士を通じて話をした方がよいと考えたから、弁護士に依頼したのではないでしょうか。そうだとしたら、相手方と直接話をしようとして何度も連絡を試みても、応じてもらえないでしょう。場合によっては、こちらにモラハラ気質があるなどと評価されることもあります。
したがって、相手方弁護士から文書が届いたら、相手方の意向に反して相手方と直接連絡をとることはできなくなります。
4 自分だけで対応した場合に起こりうること
(1)懸念点
こちらに弁護士をつけず、自分だけで対応することも可能ですが、以下のような点が懸念されます。
①言動を証拠化されてしまう
離婚の協議がまとまらなければ、どちらかが家庭裁判所に対し離婚調停を申し立てることになります。離婚調停が成立しなければ、離婚裁判に至ります。
弁護士は協議の段階から、調停や裁判を見据えて活動します。したがって、こちらが電話や文書で伝えたことは、相手方弁護士が調停や裁判で提出するため証拠として残しています。こちらの交渉態度自体が、その後調停や裁判で不利に働くおそれがあるのです。
②現状の正しい把握ができない
交渉が決裂し調停に至った場合、調停では、調停委員が当事者の間に入って話し合いを進めることになります。調停委員は、当事者から中立な立場で事実を聞き取ります。ですから、内心こちらが不利だと考えていても、特に疑問を投げかけることなく、うなずきながら話を聞くことがあります。
したがって、自分だけで調停に臨むと、自らが置かれている状況を読み誤ってしまうおそれがあります。すなわち、こちらにとって有利と考えて主張していた事実が、実際にはこちらに不利に働く事実であった、ということがあり得ます。
さらに、裁判に至った場合には、こちらの主張を法的に整理して事実として主張し、それを裏付ける証拠を提出することが求められます。また、裁判では主張を書面にして提出することが求められ、期日ごとに相手方への反論とこちらの主張を記載した書面の提出を行うことになります。
離婚の裁判に当事者本人が対応した場合、証拠がないにもかかわらず特定の主張を繰り返してしまう、相手方を非難することに終始してしまい有効な主張がされないなどによって、不利な結果に終わってしまうことが多くあります。
③精神的に疲弊する
相手方弁護士は、協議の中で一方的に相手方に有利な条件を押し付けるような態度を取ることがあります。また、弁護士は、日々何件もの交渉を行っています。交渉について全くの素人である当事者が、交渉のプロである弁護士と直接交渉することは、強い心理的ストレスとなります。
ただでさえ相手方との関係で悩んでいる中、弁護士への対応に追われることで、精神的な負担が増大することが考えられます。
(2)まずは弁護士に相談
このように、自分だけで相手方弁護士に対応することには、様々な弊害があります。
相手方弁護士から送られてきた文書には、「本通知を受領してから1週間以内にご回答ください」などと、期限が示されている場合があります。しかし、拙速に相手方の条件を受け入れる必要はありません。相手方が提示した条件が妥当かについて、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
5 弁護士に依頼するメリット・デメリット
(1)メリット
交渉段階からでも弁護士を付けるメリットは多くあります。
①相手方の弁護士と直接やり取りせずに済む
相手方弁護士との交渉がストレスになることは、すでにご説明した通りです。こちらも弁護士をつけることで、これらの精神的負担から解放されます。
②相手方の言い分が正しいのかわからない不安から解放される
相手方弁護士は、相手方の利益のために交渉を進めます。ですので、相手方弁護士が協議の中で提示した条件は必ずしも公平、公正なものとは限りません。むしろ、相手方にとって有利な条件を提示している場合がほとんどです。
提示案の根拠として「過去の裁判例からはこうなっています」「あなたの主張は裁判では認められません」などと主張することがあります。法律の知識がないと、相手方弁護士が言っていることがすべて正しいのだと思い込み、あるいは正しいのかわからないまま、不利な条件に応じてしまいかねません。
こちらも弁護士をつければ、相手方の主張が法的に正しいか否かを判断できます。また、こちらに有利な事実があれば、その事実を根拠に、慰謝料や財産分与など、相手方に対する権利を主張することができます。以上のように、相手方弁護士の主張に正当に反論して対等に交渉を進めるためには、弁護士に依頼する必要があります。
③調停や裁判になった場合も弁護士がついている方が有利に進められる
弁護士は、法的な知識を持っているだけでなく、調停や裁判の手続きにも精通しています。
調停や裁判に至った場合も、調停委員や裁判官に対しこちらの言い分を的確に伝えることができます。その結果、より有利な判断が下される可能性が高まります。
(2)デメリット
弁護士をつけた場合、大事になり、解決が難しくなると思われる方がいらっしゃると思います。ただ、相手方が弁護士に依頼している以上、当事者同士での解決は難しくなっていると言えます。弁護士対弁護士で話をした方がスムーズに解決する場合が多いでしょう。
費用がかかってしまうのはデメリットの一つです。もっとも、弁護士をつけず自分で対応すると、過大な要求に応じてしまうリスクや、本来ならば請求できるものを請求せずに離婚に応じてしまうリスクがあります。弁護士に依頼すれば費用以上の効果を得られることも多いので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
6 まとめ
以上のように、相手方に弁護士という法的知識を持った「味方」が付いた場合は、こちらも弁護士を味方につけることをお勧めします。当事務所は、離婚事件に注力しており経験豊富な弁護士が多数在籍しております。初回相談は無料で行っておりますので、離婚でのお悩みは当事務所へご相談ください。
昭和52年 3月 福岡大学商学部第二部商学科卒業
昭和57年10月 昭和57年度司法試験合格
昭和60年 3月 最高裁判所司法研修所卒業
昭和60年 4月 福岡市で弁護士登録・同時に丸山隆寛法律事務所へ
平成元年 4月 久留米市で「かばしま法律事務所」設立
平成16年 4月 福岡県弁護士会民暴委員会委員長
平成17年 1月 人権擁護委員(法務省所管)
平成17年 7月 久留米市政治倫理審査会会長
平成21年 4月 福岡県弁護士会副会長(二期目)
平成24年11月 経営革新支援機関(経済産業省認定)